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『海と毒薬』

良心的で小心な医学部の助手が、何故、生体解剖というショッキングな事件の現場に立ち会うことになったのか?彼の置かれた条件と過去を照らし、人間の意志、良心を押し流す運命を描く――。日本人にとって神とは何か、罪とは何かを根源的に追究した問題長編。毎日出版文化賞・新潮賞受賞。


薬品と血と水が混じった匂いがしてきそうな感じ。
一つの同じ人間解剖という非人道的な行為も、良心がある人間とない人間ではその罪の意識、捉え方が全く違う。人が死んでいくこと、人間を殺してしまったことを「仕方ない」と言ってのけられる戸田と、そうでない勝呂。勝呂の人生はその後、決して明るいものではなかったと思うけれど、決して間違っていない、人としての正しい在り方だと思う。それぞれの人物の視点も交えながら、戦争という時代の異様さと、日本人という独特な人種の人間描写が絶妙です。

作家の筆力のすごさを感じました

あと、女性の描き方が容赦なくてすごくおもしろかった。
差別的でひどいんだけど、どこかしら女性に対して著者の理想が垣間見えたり。女って暗くて陰湿で、でもきちんと母性も持っている、みたいな。妊娠できなくなった女性を表すのに“生理を根こそぎえぐりとられる”っていうのがあるんだけど、もう何回言うんですかそれっていうくらいよく言ってるw。でも確かにいい表現だと思います。

人間や罪の意識について考えさせられるっていうのもわかるけど、それ以前に小説としてすごくおもしろかった。

最近金欠で精神的にすごくささくれていたので、読んでいてこの暗さがかなり心地よかった。
暗い時は暗い本を読んでさらに落ちたい。

Posted by ユメコ
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thema:小説 - genre:小説・文学


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